三たび、南ゴビで恐竜発掘

卵の絵
1999年8月6日〜13日

発掘生活お食事観光


今年の収穫

[プロトケラトプスの化石] [卵の化石]
プロトケラトプスの頭
初参加の静岡のM氏、発見。
恐竜の卵
モンゴルは3度目の班長、発見。

三たび南ゴビ

ツグリギン・シレは3回目、モンゴルはこれで4回目である。
今回は日通旅行主催、中里村恐竜王国友の会後援のツアーの第1班として6人で乗り込んだ。見つけた化石はモンゴル古生物研究センター経由で中里村恐竜センターに送られ、クリーニングされるという約束になっている。自分で見つけた化石を自分でクリーニングする機会が得られるかもしれないのだ。
このツアー、添乗員はつかない。メンバーは、モンゴル3度目で最年長の人が班長、去年一緒だったMinew氏ともう1名、モンゴル初のふたり・有孔虫とアンモナイトが得意なM氏と恐竜好きの中学生の少年であった。
今年のキャンプ地はシレの南側、砂丘の側だった。発掘現場まではとっとと歩けば15分くらいのところに設置されていた。

[砂丘とツグリギン・シレ]
キャンプ地からの眺め
砂丘の向こう、左側の平らな大地がツグリギン・シレ

[ツグリギン・シレ]
発掘現場へ向かう

初日の大発見

いつも私は発掘現場に入ってから2〜3日、化石と石の区別がつかなかったのだが、なんと今回は初っぱなから化石のかけらが目に入る!
と気分をよくしていると、M氏が何か見つけたらしく、人だかりがしている。寄っていくとなんとゴロンとプロトケラトプスの頭骨が…。
襟飾りは欠けているものの、顔面左がほぼ露出している。歯もついている。なかなかクリーニングし甲斐のありそうな化石である。いや、これで1つ使命を果たしたな。
採取したところはかなり急な斜面で、頭だけとりだしたものの、他の部分はよくわからないとのこと。他のメンバーもあたりを検分する。結局、こいつは頭骨だけでおしまいであった。

[現場から]

頭骨を置くM氏

発見場所近くから砂丘方向を臨む。
現場はキャンプ地からほど近いところ。砂丘の右に見える小さい点々が我々のキャンプのゲルである。

南ゴビ名物の強風

[風の中]おととしは強風と吹き付ける砂に悩まされた。
去年は風はないかわりに蚊に悩まされた。
今年は、蚊はいなかった。そして、やってきました強い風。
初日の夕方から吹き始めた風は、キャンプ2日目の朝方にますます強くなってきた。雨も降ってきた。午前中一時、晴れたのでフィールドに出たが、飛んでくる砂が痛いので、みんな風に背中をむけて歩く(右の写真)。私はサングラスとマスクとなによりも強力な農家のおばさん帽なので、砂があたらず全然平気なのだが、みんなは早々に退散。
この日は午後も強風のため発掘はお休み。風でガタガタいうゲルの中、みんな泥のように寝ていたのであった。

憧れのバヤン・ザク

[バヤン・ザク風景]
バヤン・ザク

[がけ]バヤン・ザクときいてピンときたら、あなたは立派な恐竜マニアである。
“炎の崖”と聞いてときめかなかったら、あなたはエセ恐竜ファンである。
とまあ、そのくらい有名なのがアンドリュース隊による恐竜の卵発見の逸話である。そのバヤン・ザクに行く、と聞いた時は、もうウハウハだった。そして、キャンプ3日目の午前中、私は憧れの地に立った。
ツグリギン・シレからバヤン・ザクまでは車で1時間程。いつも近くにいるのに見に行けなかったのだが、今回はバルスボルド博士が何を思ったか、急に行こうといいだしたのだ。もちろん、事前のツアー日程には入っていない。(もしかすると、去年、私が行きたいと口走ったかもしれない…)我々の班はバルスボルド博士自身がインストラクターだったが、他の班は別の人だったので、きっと行っていないと思う。この日程でよかった。(他より2万円高いけど)

さて、バヤン・ザクはシレと違って赤い地層である。だが、出てくる化石は白い。そして、結構、化石が壁の中に埋まっている。左の写真で緑の矢印が指している白い部分は露出した化石である。
ころがっている塊の中にも化石がいっぱい… (右の写真)。

[壁の中の化石] [転石の中の化石]

ここで少年が卵の殻の化石を大量にみつけた。彼は、化石かどうかわからなかったのでほんの一部しか持ってこなかった、と悔やんでいた。私達もはじめて見る物体。少し透明感があって厚みが均一。不思議な感じのものだった。 [卵のかけら]
[ザク] 左の写真はバヤン・ザクのいわれとなったザクの木である。枝がトクサみたいになっている。
このザクの木がたくさん生えているのは実際は“炎の崖”からはちょっと離れたところである。そこは昔は池があったらしい。

[ザクの丘]
ザクの丘
手前が干上がった池だと思う。ラクダが草をはんでいる。
奥の丘にザクがたくさん生えている

今度は卵!

風がおさまってからというもの、シレは無茶無茶暑かった。そんな中、最年長の班長さんは元気元気。若いもんがお腹をくだしたり、熱射病にやられたりする中、食事は全部平らげ(私もだが)、夕食に缶ビール3本飲み、昼寝もせずにフィールドへ出て行くのである。その甲斐あってか、彼はまごうことなき卵の化石をみつけた。割れているので中の胎児とかは期待できないが、かなり立派なものである。殻の質感は少年がバヤン・ザクで見つけた卵のかけらによく似ていた。「こういうものだ」ってわかると発見率もあがるのかもしれない。
ちなみに、ウランバートルのモンゴル自然史博物館にも同じような卵があったが、どの恐竜のものかはわからなかった。オヴィラプトルの卵に似ているような気もする。

私の掘ったもの

バルスボルド博士はキャンプ4日目の夜にウランバートルにむけて出発した。我々にはあと丸1日残されているが、今からめぼしい化石を見つけても掘り出している時間はない。私は自己満足に走った。自分が見つけた化石を種類がわかるまで掘ってみることにしたのだ。

[手足の骨]左はおそらく小型のプロトケラトプスの手か足の骨。もっと先が続いていることを期待したのだが、これでおしまいだった。流れてきて埋まったものらしい。

[あばらがみえた]私は発掘3日目にぼろぼろになった小さな化石を見つけていた。頭部は風化してもうないらしい。両あばら骨が見えていた。かなり小さいので、プロトケラトプスであったら子供、大きさだけからいったら小型獣脚類の可能性もなきにしもあらず、と思い、周りを掘ってみることにした。
午前中いっぱいかかって、左の大腿骨がでてきた。前足はみつからかなった。(下の写真・左)
午後も掘り続けると、すねの骨がでてきた。(下の写真・右)しかし、足首から先がうまくみつからない。そこさえ見えればしろうとでも獣脚類かプロトケラトプスかはっきりわかるというのに。

[大腿骨がみえた][すねがみえた]

そいつは、プロトケラトプスにしては妙な格好で埋もれていた。頭が斜面の上を向いている。そして後ろ足が後方にだらんと伸びているのである。いままで見つけたプロトケラトプスはほとんどみんな斜面の下を向いて、手足を縮めてうずくまる姿勢だったのだ。私は少し期待していた。
が、ウランバートルに戻って博物館でプロトケラトプスと獣脚類のガリミムスを見たら…、やっぱあれはプロトケラトプスだったようだ。残念。

いままで南ゴビではプロトケラトプスばかりがでていた。当然、狙うのは肉食恐竜。だが、今年も果たせなかった。しかし、例年になくヴェロキラプトルと思われる歯や爪が多く見つかった。うーん、近づいてきている。また来なければならないのだろうか。

続く→


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Sep. 9, 1999
Last Modified: Oct. 30, 2001


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